アンケートに寄せられた回答にはおいしそうな献立がズラリと並び、読者の皆さんがいかに「食べること」を大切に考えているかが伝わってきました。食事作りが億劫になってきた人は市販品をうまく利用し、家族の分も作る人は家族や自分の持病も考慮。ただ、「こんなに食べなくてもいいのではないか」「食べると太ってしまう」「体重を落としたい」と悩める声も。この考えに、老年医学の専門家・飯島勝矢さんは警鐘を鳴らします(構成=上田恵子 イラスト=カトウミナエ)
低栄養を避けてフレイル予防を
私はもともと循環器内科医で、大事な仕事のひとつが、患者さんのメタボリックシンドローム(メタボ)の管理でした。その後、老年医学に取り組むようになり、いまは高齢者――主に80~90代の外来を担当しています。
人は、加齢とともに体の働きが衰えるだけでなく、外出の機会が減ったり、認知機能が低下したりするため、精神的にも虚弱していきます。
このように、加齢によって心と体の働きが弱くなった状態を「フレイル」と呼びますが、食べる機能の低下と、それによる低栄養が原因で、骨格筋――骨格を動かす筋肉が減り、自立した生活が送れなくなる人がとても多い。ですから、今回のアンケート結果にみる皆さんの食生活は、なかなか興味深いものでした。
最初に、医師の立場からひとつお伝えしておきたいことがあります。こうした健康管理に関する調査を行うとき、人は大きく次の4つに分類されると私は考えています。
1)毎日血圧を何度も測ったり、調理の際に塩分量を気にかけたりするような、健康への意識が高い層。
2)健康に対してある程度正しい知識や情報は持っているものの、生活習慣を変えられない層。まあ、大半の人が「わかっちゃいるが、できない」わけで、私もこのタイプでしょうね(笑)。
3)健康管理に対するアンテナが低い層。間違った知識を信じがちな人も、この層に当てはまります。
4)まったくの無関心層。
このアンケートで回答を寄せたのは、おそらくその多くが第一層や第二層の人たちでしょう。医療の現場では、第一層から第四層まで非常に幅広いタイプの人にお会いするため、まずこの回答は、日ごろから健康に留意した生活を送っている人の回答だ、という前提で拝読しました。