コロナは不動産業界を変えた
「直づけ」とは、物件を管理している会社だけが募集を扱える「専任媒介」のことです。―ー以前は、より多くの情報を回すために、どこの会社も客付けできる「一般媒介」が主流だったが、今は、それぞれの扱い会社からしか申し込めない。各社が自社の管理物件を囲い込み、来た客を自社物件で契約させようとする。結果、薄商いになっている――とのことです。つまり、少ない客と少ない物件を、以前と同じ数の仲介業者が取り合っているという構図です。
例えば、以前なら、客は、ネットで見た複数の物件情報を、まとめて一つの不動産屋に問い合わせして、内見して検討し、選べました。でも、いまや、物件ごとに業者が違い、「物件AはここX社で扱えますが、物件BはY社、物件CはZ社に聞いてください」というわけです。客がもし、A、B、C、3つの物件とも見て検討したいなら、それぞれの取り扱い業者に行って、客の登録をしなくちゃいけません。なんて不便なんでしょう! そうなると、面倒だからと、たまたま最初に連絡した不動産屋で、その業者が管理している物件の中から選んで(選ばされて)決めることになりそうです。
実際、私が候補として考えていた4物件について、おじさんの会社では、うち2ヵ所は、「昔はうちでも取り扱っていましたが、今は扱っていません」でした。それらは、「直づけ」の不動産仲介業者に行かなければ、内見も契約もできないそうです。地元の街や業界のことをたくさん教えてくれたので、私としては、せっかくなら、おじさんの会社に仲介手数料を払いたいのですが。そうするなら、おじさんのところの管理物件から選ばなくてはいけません。残念。
コロナは不動産業界を変えるだろうと、予言はされていました。在宅ワークが主流になり、「家時間」が増えるので、オフィスでも住宅でも、求められるものの優先度が変わってくるとは言われていました。実際、通勤には不便でも広めの家を望む人が増えたと聞きます。企業が都心の事務所を縮小したことで、オフィス需要が減り、それが飲食店の出店エリアにも影響しているようです。ですが、まさか賃貸住宅を借りる時の業界の商習慣をも変えてしまったとは、驚きです。
でも、時間に余裕のある私には有利だ、とも考えられます。複数の物件について複数の業者に問い合わせる手間を惜しまない人だけが、気に入った物件A、B、Cを見比べることができるのですから。忙しい転勤族は、そんな労力や時間をいとうでしょう。私はそのぶん足で稼げばいいのです。
地道にポータルサイトを見比べ、良い物件を探し、見つけたら、面倒がらずにそれぞれの業者に連絡するのです。春の繁忙期を過ぎた3月下旬以降に、じっくり物件を探したほうが良いとも、おじさんには助言されました。ですから、もう少し時間をかけて探すとしましょう。年齢的にはまだ、まったく問題ないと、プロからお墨付きをもらえたことですし。
◆本連載が書籍化され3月8日に発売されました