(構成◎上田恵子 撮影◎米田育広)
人生を変えた一曲との出会い
芸能界入りのきっかけは2002年、高校3年生の時に出場した第15回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストです。ファイナリストに選ばれ、この業界に進むことになりました。
僕自身、俳優や歌手になりたいという思いが強かったわけではないのですが、周囲の後押しもあって、「芸能人になれるのなら」と姉に応募してもらいました。前年の第14回大会にも参加していたため、二度目のチャレンジということになります。ちなみにその時は二次審査で落ち、グランプリに選ばれたのは、小池徹平さんでした。
ちょうど進路を決める時期で、地元は名古屋なのですが、親から「大学受験だけはしなさい」と言われて県内の大学に推薦入学の願書を出したものの、結果は不合格。それを機に、上京する意志が固まったというのもあります。自覚はしていませんでしたが、心のどこかに「東京に行きたい」という気持ちがあったんでしょうね。
コンテスト終了後、スカウトしてくださった事務所のうちの一社と契約をし、卒業式の翌日に名古屋から東京に向かいました。
初めての東京で、初めての一人暮らし。意気揚々と新生活を始めたところまでは良かったのですけれど、わずか半年で所属した事務所が潰れてしまって。事情を説明しに実家に帰った際、親からは「戻って来てもいいんだよ」と言われましたが、さすがに半年で戻るわけにはいかない。「とりあえずお金を貸してください」と頭を下げ、アルバイトをしながら道を模索することにしました。
そんな時に出会ったのが、ザ・ベイビースターズの「去りゆく君へ」という曲です。友人が「いい曲だから聴いてみなよ」とCDを貸してくれたのですが、僕はそれを聴いて泣いてしまって。別々の道を歩くことになった恋人たちを歌った歌詞が、自身の状況にリンクしている気がしたんですよね。「地元の仲間たちは就職・進学とそれぞれの方向に進んでいるのに、俺は一体何をやってるんだろう?」って。
音楽を聴いてそこまでストレートに感情が出たのは初めてで、「自分もこんなふうに歌で人の心を動かしたり、変わるきっかけを与えられる人間になりたい」と思ったんです。「歌を歌いたい」という新たな目標ができたのもその時で、もしあの曲に出会っていなかったら、僕は音楽をやっていなかったでしょうし、この業界に戻ってきたかどうかもわからない。本当に、人生を変える出会いってあるんだなと思いました。