貧困家庭に生まれ、いじめや不登校を経験しながらも奨学金で高校、大学に進学、上京して書くという仕事についたヒオカさん。現在もアルバイトを続けながら、「無いものにされる痛みに想像力を」をモットーにライターとして活動をしている。ヒオカさんの父は定職に就くことも、人と関係を築くこともできなかったそうで、苦しんでいる姿を見るたび、胸が痛かったという。第40回は「数年ぶりの帰省」です。
数年ぶりに実家に帰った
数年ぶりに実家に帰った。
しばらく帰っていなかったのは、単純に数万円の交通費がかかるからというのもあるし、コロナ禍で高齢の両親に会うのがはばかられたというのもある。でも、それだけではなく、精神的にも、少し前なら難しかったと思う。
幼い頃から母に暴力を振るい続けた父には、ずっと複雑な感情があった。私が高校生の時には暴力は止んだが、父の精神障害の影響もあってか、コミュニケーションがなかなかうまくいかない。それでも、家を出てからも誕生日には手紙を贈り、電話がかかってきたら話して、それなりに付き合いもあった。
ただ、1年前くらいからだろうか。精神的に拒絶反応のようなものがでるようになった。きっかけは、私の大人になっても続く様々な心身の不調が、幼いころから激しい暴力を見続けてきたことが原因だと、複数の医師に指摘されたことだった。
それまで、自分は暴力を受けていないのだから虐待は受けていないと思っていた。でも、面前DVは虐待なのだ。大人になってからも、影響は残り続ける。