(イラスト=川原瑞丸)
ジェーン・スーさんが『婦人公論』に連載中のエッセイを配信。今回は自尊感情について。あるインタビューを受けたスーさん。それをきっかけに、自分のあり方を気に病む場面が減っていたことに気づいたそうでーー。(文=ジェーン・スー イラスト=川原瑞丸)

20代も30代も、己の敵は常に自分だった

自尊感情についてのインタビューを受けた。自己肯定力をどう身につけるか、それをどう養ってきたかなどについて尋ねられた。

小一時間のインタビューを終え、自分のあり方を気に病む場面がグッと減ったことに改めて気づく。自分と他者を比べて肩を落としたり、優越感に浸ったりしていた20代も30代も、思い返せば己の敵は常に自分だった。

他者も時には敵であった。思いもよらぬ場面で不躾にこの身を測られ、「長すぎる」とか「短すぎる」とジャッジされたことは誰にでもあるだろう。あれは他者が他者自身を傷つけるものさし型の刃を振り回した結果、第三者にも被害が及んでいたのだと思う。他人を「長すぎる」「短すぎる」と決めつける人間が、そのものさしを自身にあてないわけがない。当時はそんなこと、想像もできなかったけれど。

若い頃は気に病む力があり余っていた。大勢が狭い場所で刃を振り回しまくっていた。そりゃ怪我人だらけになるわけだ。