1982年、年5週間(年間30日間)の有給休暇を法制化したフランス。有給取得率も100%に近いと言われるほど高く、「バカンス大国」として、国民は豊かな暮らしを謳歌している印象があります。一方、フランス・ブルターニュ地方で生活しながら、田舎暮らしをブログで発信しているのが旅行ジャーナリストのシャルバーグ八千代さん。八千代さんは「フランスでの男女の付き合いは、必ずしも『結婚』が目的や前提にならない」と言っていて――。
結婚にしばられない
日本で未婚の男女が付き合い始めたら、ほとんどの場合、本人たちはもちろん周りも含め、どこかの時点で「結婚」が視野に入ってくると思います。最初から、結婚を前提にお付き合いを始めることもあるでしょう。
ところがフランスでの男女の付き合いは、必ずしも「結婚」が目的になることも前提になることもありません。
フランスには、1999年に施行されたパックス(Le pacte civil de solidarite の略)という制度があります。日本語に訳すと「連帯市民協約」となります。
要するに、正式な法律婚と同様の社会保障や税金の控除が受けられる制度です。当然、同性でも認められています。手続きは、必要書類を居住している役所かノテール(notaire)と呼ぶ公証人に提出して行います。条件は成人で同一住所で暮らしているなど、結婚の場合と同じです。
フランスでは70年代後半から離婚件数が増え、その年代の親を持つ次世代は、結婚をせず同棲で子供をもうけるケースが増えました。フランスでの離婚は、今はだいぶ手続きが簡素化され迅速に進むようになりましたが、弁護士を立てなければならず、時間とお金がかかります。面倒な親の離婚を見ていた体験から、結婚を敬遠するようになったとも言われています。
未婚カップルの子供が社会的に差別されることはありませんが、かつて同棲は法律的にいろいろな不都合がありました。
特に経済的な面で、例えば正式な結婚の場合なら夫婦の収入から控除される税金が、単なる同棲では優遇がありませんでした。