視力の低下や老眼に加え、白内障や緑内障などは、年齢を重ねるにつれ増える症状や病気です。人生100年時代、できる限り長く目の健康を維持するためのケア方法を紹介します(イラスト/小林マキ 取材・文・構成/葛西由恵《インパクト》 デザイン/米山和子《プッシュ》)
デジタルツールの使用が負担をかける
脳に送られる情報の80%は視覚経由といわれるように、人間は目から入る情報に頼って生きているといっても過言ではありません。「その割には多くの人が目の健康に無頓着」と話すのは、二本松眼科病院副院長の平松類先生です。
「昔の人は太陽が昇ったら活動を始め、太陽が沈んだら眠るという生活スタイルで、目を使う時間は限られていました。ところが電気が発明され照明が普及すると、夜間も活動できるようになり、以来、目を使う時間がどんどん長くなってきたわけです」(平松先生。以下同)
加えて、現代はテレビやパソコン、スマホといったデジタルツールが普及し、さらに目に負担がかかる状況になっていると指摘します。
「古代の人々にとって、太陽が出ている時間は狩りの時間でした。獲物を見つけるにも、襲ってくる敵がいないか警戒するにも、必要になるのは周囲を見渡す目です。つまり、明るいところで遠くを見るのが人間に備わった自然なメカニズム。しかし現代では、テレビ、パソコン、スマホなどそれ自体が強い光を放つ明るいものを至近距離で見ることが増えています。人間にとってこれはとても不自然な行為といえ、目に負担をかける大きな要因になっているのです」