2025年06月19日

鎌田實「死んでも畑仕事を続けたい」と手術を拒否し続けた80歳の男性。周囲から反対されるも最後には納得。患者、医者、家族、みんなのこころが一つになった結果…

うまいように死ぬ
×

会員限定の機能です。
詳細はこちら

X

うまいように見事に生きている

諏訪中央病院の救急外来で入院をすすめられましたが、どうしても入院したくないと、翌日、僕の外来に相談に来ました。

本人はやはり入院したくない、死んでもやりたいことを続けたいと、いまの生活に満足しています。

奥さんも娘さんもニコニコしながら、「しょうがないわね。これがおじいちゃんの生き方だから」と納得しています。みんなの心がひとつになってきました。

こうして、畑仕事という生きがいを手放さずにすんだBさんは、病気と付き合いながら、ぴんぴん元気に13年、好きなように生きました。ついに93歳。

自分の時間と、自由な時間を生きているBさんは「死んでもいい」と言いながら、うまいように見事に生きています。

※本稿は、『うまいように死ぬ』(扶桑社)の一部を再編集したものです。

【関連記事】
鎌田實「メロンパーティを開いて」「シャンソンを聴いて」「讃美歌を歌いながら」医者として<ちょうどいい死に方>を見てきて気づいたこと。結局、人生全体を輝かせてくれるのは…
鎌田實 実の親に捨てられた僕が勇気を出して「医学部に進みたい」と養父に言った日。「あこがれ」を持ち続ければ生きるのが楽になる
「活」のつく言葉にはどんなものがある?ラン活、ソロ活、マネ活…続々登場の背景は?ライフスタイルの多様化が関係か

うまいように死ぬ』(著:鎌田實/扶桑社)

うまいこと生きれば、ちょうどいい死に方ができる!

77歳のいまも医師として、多くの患者に接することの多いカマタ先生。
そんなカマタ先生がいままで出会った人々や自身の体験をもとにまるごと一冊、死の話にこだわって文章をつづりました。

人間は下り坂でこそ上手な人生のギアチェンジができる。
年をとってくると〝忘却力〞というパワーが全開。
上手に利用すると、「ちょうどいい忘却」の状態が起きる。

すると若い頃にはできなかった「ちょうどいいわがまま」や「ちょうどいい堕落」ができ、その延長線上に「ちょうどいい死に方」が待っている。そして、おひとりさまでもうまいように死ぬことができる。

(写真:本社写真部)
77歳のいまも医師として、多くの患者と接している鎌田實先生。これまで出会った人々や自身の体験から「人は歳を重ねて迎える下り坂でこそ、上手な人生のギアチェンジができる」と感じるようになったそうです。そして若い頃にはできなかった「ちょうどいいわがまま」や「ちょうどいい堕落」ができるようになった延長線上に「ちょうどいい死に方」が待っている…といった先生の想いをまとめた『うまいように死ぬ』より今回は一部を抜粋、ご紹介します。

手術は受けない

「手術は受けたくない」「生きがいの畑仕事も続けたい」

そうはっきり主張したのは、解離性大動脈瘤(かいりせいだいどうみゃくりゅう)が見つかった80歳の男性Bさん。

ほかの病院で手術をすすめられましたが、納得できず、諏訪中央病院の内科外来に来ました。

きのこ採りが大好きで、たくさん収穫できたときには「先生、おすそ分け、うまいから食べてみろ」と言って、持ってきてくれました。

「畑仕事を続けたい」という望みに家族は大反対

解離性大動脈瘤はなんらかの原因で血管の壁に裂け目ができ、血管がコブのように膨らんでしまう病気です。安心して生きるためには、人工血管に置き換える大手術が必要です。

『うまいように死ぬ』 (著:鎌田實/扶桑社)

彼と何度も話し合いをしました。

彼は「手術は受けたくない」と言います。

家族も交えてさらに話し合いをしました。家族は迷いながら「おじいちゃんの命だからおじいちゃんが決めればいい」という結論になりました。

しかし「畑仕事を続けたい」というBさんの望みに、ご家族は大反対です。

農作業は力仕事なので、裂け目が広がるリスクがあるからです。

そこでとった作戦は…

僕はここでもBさんの意思を尊重しました。

その代わり、血管の解離が進まないように、上の血圧を120ぐらいまでに抑える作戦を提案。薬を飲みながら、減塩、野菜をとるという作戦です。

奥さんとみんなで隠し事なく話し合い、本人もご家族も同意してくれました。

そのうちBさんは大動脈瘤が広がって、反回神経というのどに行く神経が圧迫され、しゃがれ声になってしまいました。

それでもめげませんでした。

うまいように見事に生きている

諏訪中央病院の救急外来で入院をすすめられましたが、どうしても入院したくないと、翌日、僕の外来に相談に来ました。

本人はやはり入院したくない、死んでもやりたいことを続けたいと、いまの生活に満足しています。

奥さんも娘さんもニコニコしながら、「しょうがないわね。これがおじいちゃんの生き方だから」と納得しています。みんなの心がひとつになってきました。

こうして、畑仕事という生きがいを手放さずにすんだBさんは、病気と付き合いながら、ぴんぴん元気に13年、好きなように生きました。ついに93歳。

自分の時間と、自由な時間を生きているBさんは「死んでもいい」と言いながら、うまいように見事に生きています。

※本稿は、『うまいように死ぬ』(扶桑社)の一部を再編集したものです。

出典=『うまいように死ぬ』 (著:鎌田實/扶桑社)
鎌田實 鎌田實 医師、作家

1948年東京都生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、諏訪中央病院へ赴任し、長年地域医療に携わる。チェルノブイリ、シリア、東日本大震災の被災地支援に精力的に取り組む。『鎌田式「スクワット」と「かかと落とし」』『鎌田式健康手抜きごはん』『医師のぼくが50年かけてたどりついた 鎌田式長生き食事術』著書多数

 

うまいように死ぬ
作者:鎌田實
出版社:扶桑社
発売日:2025/5/23
amazon 楽天ブックス honto 紀伊國屋書店 7net
出典=『うまいように死ぬ』 (著:鎌田實/扶桑社)
鎌田實 鎌田實 医師、作家

1948年東京都生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、諏訪中央病院へ赴任し、長年地域医療に携わる。チェルノブイリ、シリア、東日本大震災の被災地支援に精力的に取り組む。『鎌田式「スクワット」と「かかと落とし」』『鎌田式健康手抜きごはん』『医師のぼくが50年かけてたどりついた 鎌田式長生き食事術』著書多数

 

×

会員限定の機能です。
詳細はこちら

X
ページのトップへ