叶井さんが、同じ映画プロデューサーとして<レジェンド>と評している奥山和由さんと、互いの歩みを振り返ってみれば――。(写真:『エンドロール! 末期がんになった叶井俊太郎と、文化人15人の“余命半年”論』より)
経済産業省によると、日本で上映された映画の本数は2010年の716本に対し、20年には1,017本と1.4倍以上に増加しています。そんな映画業界でも知らない人のいない名物宣伝プロデューサーが叶井俊太郎さんです。数々のB級・C級映画や問題作を世に送り出しつつ、会社は倒産。“バツ3”という私生活を含めて波乱万丈な人生を送ってきましたが、膵臓がんに冒され、余命半年との診断を受けています。「残りの時間は治療に充てず、仕事に投じることに決めた」叶井さんが、同じ映画プロデューサーとして<レジェンド>と評している奥山和由さんと、互いの歩みを振り返ってみれば――。

「叶井を支えてきたのは、ひたすら女性だよ」

奥山 『クラッシュ』(98)というレーサーの太田哲也が雨の富士スピードウェイで炎上した事故から一命を取り留め、レースに戻ろうとするドキュメンタリー映画をやったことがあって。彼は事故で全身焼かれているときに、死神や走馬灯を見たんだって。

叶井 へー、すごいっすね。

奥山 そういう経験をした太田に「あの世や神を信じているか?」って聞いたら、「信じていない」と言うんです。あれは記憶が蓄積されている側頭葉が、死にそうになって活性化した働きによるものだと。それは人間だけでなく動物にも組み込まれているシステムみたいなものらしい。ディア・ハンターは、鹿が仕留められた時に幸せそうな涙を流すのをよく目撃するとか。

叶井 なるほどねぇ。奥山さんは余命半年と言われたらどうします?

奥山 改めて考えると、叶井俊太郎と同じように、やることはそう変わんないんじゃないかなって気がする。イメージが湧かないけど、人間生かされている以上、今目の前にあることをきちんとやろうという感じかな。叶井の場合、あまりきちんとはやんないけどね。

叶井 やっているじゃないですか! 日々のルーティンとして。

奥山 叶井俊太郎は女に支えられて生かされてきた人生だから、ズルいよな。

叶井 それは否めないかもです。

奥山 オレが初めて叶井俊太郎を見たときは『アメリ』の頃で、当時は近づくのも面倒くさいぐらいパーティーでブイブイだったわけですよ。「あー、あれが叶井俊太郎か」と思って、「どれ食っちゃおうかな〜」みたいな顔している姿を離れたところから眺めていたけど、「これは女性も寄るわ」と思ったね。

でも、ホストのような人種とは、また違う魅力ですよ。どうやら性欲という強烈な本能はあるみたいだけど、自分から媚を売らないというか、その本能に計算がない。一種の王国がそこにできていて、あるがままにその場にポンと立って、女を引き寄せている。オレは無神論者だけど、神は随分と強烈なものを彼に与えたなと思いましたよね。この人は一生こうやって幸せに生きていくんだろうなと。

叶井 あははは、そうですか。