(撮影◎本社 奥西義和 以下すべて)
「くらたま」こと漫画家の倉田真由美さんの夫で、映画宣伝プロデューサーの叶井俊太郎さんが、末期のすい臓がんで「余命半年」であることを明かし、話題になっている。同時に、対談本『エンドロール』を上梓する予定だという。サブタイトルは「末期がんになった叶井俊太郎と、文化人15人の“余命半年”論」。叶井さんと関係の深い人たちとの「抱腹絶倒」の対談集だ。叶井さんは、2022年6月、激しい黄疸が出て受診。しかし、最初の病院では胃炎と診断されて帰され、2軒目では胆石・肝炎を疑われたものの検査結果で違うとなり、やっと3軒目で発覚したのが「すい臓がん」だった。人生で一番泣いたというその日から1年4ヵ月。倉田真由美さんに妻としての今の心境を伺った。
(構成◎吉田明美 撮影◎本社 奥西義和)

「余命は半年です」と病院で告げられて

「末期のすい臓がんで余命半年」と宣告を受けた昨年から、私は何度も大泣きしましたが、夫は常に淡々としていました。あっけにとられて淡々としていたわけではなく、本当に純粋に「人は誰でも死ぬんだから、しかたないよね」と受け止めていたのです。あっぱれです。才能ですかね。(笑)

病院では、「このまま放っておくと、余命は半年です。まず抗がん剤でがんを小さくして、それから手術をしましょう。それで5年生存率は2割ぐらいです」と言われました。それが現在の医学の「標準治療」らしいです。

抗がん剤で小さくしなければ手術は不可能で、もし小さくなって手術ができたとしても、「5年生存率は2割」というのはあまりにも分が悪い。ほかに方法はないかと、すぐに調べまくってセカンドオピニオンだけでなく、サード、フォースといろいろなドクターに診断を仰ぎましたが、たいてい言われることは同じ。また免疫治療など、いろいろな方法についても模索して、多方面の専門家の話を聴きに行ったりもしました。

加えて、夫はこれまでも、先のことなどまったく考えずに自由に生きてきた人です。やり残したことがないし、この世に未練もないと…。子育てに没頭してきた中学2年娘のことは大好きだけど、娘にも「楽しく生きろよ」という以外言い残すこともない。決して無理して、かっこつけて言っているのではなく、本心から言っているということはよくわかります。なにしろ、お菓子が大好きで、いわゆる駄菓子をいつも買い込んでいる。食後はいつもお酒、ではなく、お菓子。健康診断で指摘されても、それをまったく改善しようとしない人でした。変える人が多いものですが、夫は長生きのために何かを変えよう、という意識は働かなかった。

そして今回、夫と私は、「抗がん剤治療はしない、手術もしない」という選択をしました。

がんを宣告されたときは、黄疸はひどかったけれど、毎日会社に行ってたし、家事もこなしていたし、なにより毎日笑って楽しく暮らしていたんです。もし抗がん剤治療をして手術ということになれば、かなり長い期間入院をして苦しんで…という日々が続くことになります。それよりは抗がん剤も手術もしないで、今のまま日々を変わりなく過ごすというほうを選んだということです。

放っておけば半年と言われて、今、1年4ヵ月経って、まだまだ記録は伸びそうなので、この選択についてはまったく後悔していません。