突然死とがん、選べるなら

達観した死生観みたいなものは、夫の家系の特徴なのかもしれません。義母に夫の病気のことを話した時も、嘆くでもなく「私も病気持ちだから、どっちが長生きできるか競争や」と。娘もこの血を継いでいるようです。

もともと夫は先のことなんてまったく考えていない人でした。常にシンプルに、単純な回路の中で生きてきた。女性を口説くにも策を弄することなんてできないし、しようともしていなかったと思います。

3年前に夫は心筋梗塞をやったんです。ある早朝「みぞおちのあたりが気持ちが悪い。食あたりかな」と言う夫を見て「もしかして心臓?」とちょっと疑いました。夫は、健康診断でいつも、コレステロール値が高く、心臓も肥大しているという指摘をずっと受けていた。でも、心臓に何かあると胸をかきむしって「うううっ」とうずくまって苦しむイメージがあったので、やっぱり違うかなと…。半信半疑でネット検索をしていると、心筋梗塞の初期症状にあてはまる。それで慌てて、とにかく循環器の専門家を検索。家の近くに、朝7時半から診てくれる循環器専門のクリニックを見つけました。

すぐに2人で、それぞれの自転車に乗って、クリニックに向かったんです。自転車で…と後からみなさんに笑われてしまったのですが、家を出るときはそんなに深刻だとは思わず…。でも、到着したときには、夫はかなりしんどそうで、心電図をとったところ「これは急を要します」とすぐに救急車で総合病院に搬送され、「冠動脈形成術」のカテーテル手術となりました。

その時に、人間って突然こういうことはあるんだなあと、ちょっと覚悟しました。何があっても不思議はないなと…。でも、心臓は治療してしまえば、また元通りの生活に戻れます。2週間入院したのですが、退院後の夫は、食生活を改善することもなく、相変わらず、その後も駄菓子を食べ続け、コーラを飲み続けています。やっぱり、すっかり元気になった前回と今回とでは、感覚が違いますね。突然死とがんと、選べるならどちらがいいか、ってよく言われますが、私は今はがんかな、と思います。

突然死とがんと、選べるならどちらがいいか。今はがんかなと思う