思い残すことがまったくない人生

去年の夏に「これが最後の家族旅行だ」と覚悟して南の島に行き、私は涙が出てきたりしましたが、今年の夏もちゃんと行けた。日々、穏やかに過ぎていっていることがうれしいです。自分だって明日どうなるかわからないわけですから。

この人と結婚してよかったと改めて思います。この人が今、一人だったらどんな風になっていたか…。私という人間がいてよかったと。がんサバイバーで、1日でも長く生きるために生活をがらりと変える方も多い。もちろんそれも生き方だし、選択です。でも、夫は一日でも長生きしようなんて全く考えていないし、毎日、好きなお菓子を食べて、好きな人たちに会って、好きな漫画や映画を観て、好きに生きてくれればそれでいい。妻として思い残すことがないと言われて、寂しいというより、そのほうが嬉しい。

もし「いますぐ死ねるボタン」があったら、彼は押すと思います。それほど、思い残すことがまったくない人生だからです。

つい先日、夫から「あんたがいてくれてよかったよ」と言われたんです。こんな弱気なことを言う人じゃないのに、とまったく嬉しくなかった。毎日、肩や手足を揉んだり、食べ物を用意したり、果物をむいたりしても「ありがとう」なんて言ってくれなくていいんです。そんな弱気な態度は見せてほしくない。何も考えない、今までどおりの夫でいてほしいと思っています。

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