「リビングでパソコンを操作している夫の後ろ姿が視界に飛び込んできて、途端に私は激しい過呼吸に陥ってしまい、『やっぱり無理』『もう限界だ』と」

泣いてばかりいた主婦時代を超えて

離婚したいと思いましたが、両親から子どもたちのためにも離婚は得策ではないと説得され、私は夫と再び暮らし始めます。ところが数年たったある日、台所でジャガイモの皮を剥いていた時に、ふと視線を上げたら、リビングでパソコンを操作している夫の後ろ姿が視界に飛び込んできて、途端に私は激しい過呼吸に陥ってしまい、「やっぱり無理」「もう限界だ」と。かくなるうえは死のうと車で家を飛び出しました。

もしもあの時、親友から携帯電話に連絡がなかったら、私は海に身を投げていたと思います。どういうわけだか電話に出て、話しているうちに冷静さを取り戻し、私は命拾いしたのです。

とはいえ事態が好転したわけではありません。私の異変に気づいた両親が離婚に同意してくれたこともあり、離婚へと駒を進めましたが、世間体を気にする夫は頑として聞き入れてくれませんでした。どうしてもというのなら、子どもたちは跡取りなのだから置いて行けと。生活のめどもありませんでしたが、子どもを奪われては、それこそ生きていけないと苦悩する日々が続きました。

当時、息子は高校3年生、娘は中学3年生と2人とも受験を控えていたのですが、ある晩、2人で話し合って決めたのでしょう。「泣いてばかりいるお母さんを見たくないので離婚してほしい」と言ってくれまして、その後もいろいろなことがありましたが、43歳の時に離婚が成立したのです。

『想いが伝わる――笑い文字レッスン』(著:廣江まさみ/かんき出版)