若者はもうテレビを見ていない
和田 ネットの動画の真似(まね)事のようなテレビ番組が増えましたけど、やっぱり物足りないですからね。少し前のことなんですが、私が大学で教えるようになって、相手は10代後半から20代前半です。
あるとき、その日の朝にやっていたニュースの話題になったのですが、いまいち反応が薄い。ですから学生たちに「今朝の『モーニングショー』(『羽鳥慎一モーニングショー』テレビ朝日系)を見てきた人いる?」と聞いてみたんです。
そしたらどうなったと思います? 教室が静まりかえって、見たと答えたのは60人の教室でたった1人ですよ? びっくりして、「日頃からテレビを見ている人は?」と重ねて質問したら、手を挙げたのは、わずか3人。率にしてたった5%なんですが、あながち間違った統計的な数字じゃないと思います。
若宮 そんなに少ないのかもしれないのですね。
和田 どういうことかというと、若者の多くは、テレビを見ていないし、もっといえば持っていない人も増えている。調べてみると、10代、20代の単身世帯では、テレビの保有率がパソコンの保有率を下回っていました(2023年、LINEリサーチ調べ)。
10代、20代は、YouTube(ユーチューブ)やその他ネットメディアに流れているということですね。それなのに、テレビ局はいまだに、若い人向けにせっせと番組を作っている。だから需要と供給のミスマッチが起きているわけなんです。
私なら、テレビの視聴習慣のある高齢者向けの番組をどんどん増やすように提案します。電波は公共の財産でもあるわけですから。
若宮 そうなったら嬉しいですね。
和田 テレビ局は、消費に結びつく購買層を狙って番組作りをしているんだ、というけれど、データを見る限り、お金を持っているのも、購買意欲があるのも、高齢者ですからね。
こうした状況を変えるには、高齢者も待っているだけではダメで、若宮さんみたいに自分から要求する人が、もっともっとたくさん出てこないといけないとも思います。
※本稿は、『和田秀樹、世界のマーチャンに会いに行く』(小学館)の一部を再編集したものです。
『和田秀樹、世界のマーチャンに会いに行く』(著:和田秀樹・若宮正子/小学館)
和田医師が日本の高齢者の「ロールモデル」と敬愛する、世界最高齢プログラマーの若宮さんと緊急対談。超高齢社会ニッポンの大問題や新たな高齢者像について語り合います。