(イラスト=川原瑞丸)
ジェーン・スーさんが『婦人公論』に連載中のエッセイを配信。今回は「映画」について。サブスクで見た2つの映画にとても興奮したというスーさん。あらためてその理由を考えてみると、ある共通点に気が付いてーー。

映画に興奮

とある休日。何の気なしに、SNSで薦められていたスペイン映画『ノーウェア:漂流』をNetflixで観た。いろいろあって海に浮かぶコンテナに閉じ込められた妊婦が、孤軍奮闘の末に脱出するサバイバル映画だ。これがすこぶる面白かった。えも言われぬ興奮に呼吸が荒くなった。

ハリウッドで活躍する著名俳優は誰ひとり出ていない。感動大作でもない。個人的な記憶と紐づいて感情が揺さぶられたわけでもない。では、なぜ? よく理解できぬままその日は床に就いたが、気が高ぶってよく眠れなかった。

数日後。今度はU-NEXTで『フライト・ゲーム』を観た。こちらはうらぶれた航空保安官が、犯人不明のままハイジャックされた旅客機内で悪戦苦闘する話。リーアム・ニーソンやジュリアン・ムーアといったハリウッド俳優が出演しており、ジャンルとしてはサスペンスアクションになるらしい。私はこれにも大いに興奮した。