シヅ子の「絶対的な素質」
シヅ子のスウィンギーな歌唱、リズムのノリは、それまでの日本の歌手とは一線を画していると指摘。ジャズ・マニアの双葉は、これまでレコードを通して知ってきた、エラ・フィッツジェラルド、マキシン・サリバン、ミルドレッド・ベイリー、ルイ・アームストロングたちのスウィング感は、日本のアーティストでは求めても得られないと諦めていた。
しかし「笠置シヅ子は、この憂鬱を、希望と歓びに置き換えた」と前置きをして、「セントルイス・ブルース」におけるシヅ子のスタミナ、パワーが他の追随を許さないこと。同時に、スウィング感は、本能的な鋭さにある。
「メーク・リズム」での、ホット・スタイルの圧倒的な盛り上がりと絶頂感。
続く、スロー・フォックストロットの「接吻して話してよ」が、単に甘く美しいだけの歌唱ではなく、シヅ子が歌うと、ジャズ歌手らしいスウィング感が生まれて「スイート・スウィングの本当の味が出てくるのである」。
それはシヅ子の「絶対的な素質」であり、ホットからスイートに転ずる瞬間の巧みさは、それまで舞台では見たことがないと、そのフィーリングも絶賛している。