(画=一ノ関圭)
詩人の伊藤比呂美さんによる『婦人公論』の連載「猫婆犬婆(ねこばばあ いぬばばあ)」。伊藤さんが熊本で犬2匹(クレイマー、チトー)、猫2匹(メイ、テイラー)と暮らす日常を綴ります。今回は「ハンターたち」。伊藤さんの飼い猫、メイは灰色で、テイラーは茶色。性格も能力も異なり、ハンター性も全く違うそうで――(画=一ノ関圭)

猫婆犬婆というタイトルのわりに猫のことを書いてない。よそで犬については書いてるが、猫はあまり出てこない。若い頃あたしは何代もの猫と暮らしたのに、ここ二十数年間ですっかり犬仕様になっていたのだ。

メイとテイラー。二匹ともがっしりずっしりどっしりで、メイは灰色で、テイラーは茶色、メイはフクロウ的な丸顔で、テイラーは大型ネコ科猛獣みたいな顔だちをしている。性格と能力はかなり違う。

お風呂場(兼トイレ)についてきて、あたしと同じことをするのがメイだ。あたしがおしっこしていればおしっこするし、お風呂に入っていれば湯ぶねをのぞく。洗濯していればそばにうずくまって見ている。抱っこされればごろごろ言い、そのまま爪を切らせてくれる。両手をあげておなか丸出しで寝るし、開けてほしくない戸を器用に開ける。

一方、テイラーはごろごろ言わない。抱っこされても落ち着かないから、爪は切れない。興味はひたすら猫じゃらし。外に出たらすごいハンターとして小鳥や小動物を殺しまくるだろうと思うほど、どこまでも跳び、どこまでも追いかける。でもそのテイラーが夜はベッドに寝に来る。重たくて温かい。

メイはベッドで寝ないが、あたしが目覚めたのを感知するとテレポートしてくる。頭をすりつけ、腰をくねらせるから、ベッドの上いちめんに毛が降りしきる。