マリさん「デパ地下への恋しさは、海外滞在中に限ったものではない」(写真提供:Photo AC)
レオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロなど、世界的にも有名な芸術家を数多く生んでいるイタリア。美術館も多く、素敵な街並みに一度は訪れてみたいという方も多いことでしょう。そのようななか、17歳でイタリア・トスカーナ州にあるフィレンツェに留学し、「極貧の画学生時代に食べたピッツァの味が、今でも忘れられない」と語るのは、漫画家・文筆家・画家として活躍するヤマザキマリさん。マリさんいわく「デパ地下への恋しさは、海外滞在中に限ったものではない」そうで――。

「日本の何が一番恋しくなりますか?」

海外暮らしが長いため、「日本の何が一番恋しくなりますか?」という質問を何度か受けてきた。質問者のほとんどは、私が「風呂です」と答えるのを期待していたのかもしれないが、残念ながら10年近く前に暮らし始めたパドヴァの家には、巨大な風呂が設えられている。

だから、あの古代ローマ人が日本の銭湯に現れるという漫画を描いた頃の、入浴への渇望感を日々抱えて生きていた時とは事情が違う。

「風呂」という答えが返ってこないと質問者はがっかりするが、知ったことではない。今の私であれば、迷わずこう答えるだろう。

「デパ地下です」

デパ地下への恋しさは、海外滞在中に限ったものではない。日本に長期間滞在している時ですら、私は日々デパ地下のことを想いながら過ごしていると言っていい。

日本の仕事場は二子玉川の近くにある。電車に飛び乗れば、ものの数分で物欲を掻き立てて止まない素敵なデパートに足を踏み入れることができるので、「ようし、この原稿が終わったらデパ地下に行って食べたいもの全部買うぞ!」と決意さえすれば、ペンの進みも格段に違ってくる。今のところ効果は抜群だ。