足が悪くても、椅子に座って楽しそうに調理する松崎さん。「今日はたんぱく質が足らんき、レバーを炒めるぞね」(撮影:釣井泰輔)
地域の伝統的な食文化が、食の欧米化や生活様式の多様化により失われつつあります。自然豊かな高知県で生まれ育ち、土佐の伝統食の研究を続ける松崎淳子さん(崎は正しくはたつさき)に、郷土料理の魅力を教えてもらいました(構成=野田敦子 撮影=釣井泰輔 イラスト=あなんよーこ)

<前編よりつづく

料理をするのは、1日に1回

私は、毎日必ず朝昼晩と3食きちんといただきます。体が要求するから、自然とそうなるの。加工食品は食べず、ほとんど手作り。歳とともに食事の支度が億劫になるというけれど、私はちっとも苦になりません。

といっても料理をするのは、1日に1回だけ。夕食のおかずを4、5人分と多めに作って、2人分は娘とその日に食べ、残りは冷蔵庫に入れておく。それが翌日の娘のお弁当や私の朝ご飯、昼ご飯のおかずになるというわけ。電子レンジでさっと温めて並べたら、あっという間に品数豊富な食卓になります。

よく作るのは、「大根、にんじん、ごぼうとこんにゃくの炊き合わせ」「りゅうきゅうの酢の物」「魚の切り身のパン粉揚げ」「鶏レバーとにんにく芋の炒め煮」など。

パッと見て緑黄色野菜が足りないなと思ったら、常備している大根葉のお手製ふりかけを出してきたり、たんぱく質が不足していたら、おじゃこをパラパラとかけたり、卵かけご飯にしたり……。

特別なことは何もしていないけれど、長年学生に教えてきたせいか、無意識に栄養バランスを考えているみたい。こんな食生活を続けているので、病院で調べても検査の数値はすべて正常。足が痛い以外、「どこっちゃァ悪うない」といつも自慢しています。