定型だからこそ遊びがいがある

 『サラダ記念日』が出た後、私のほかにもさまざまな歌人が登場して現代短歌ブームが起きましたが、最近また短歌が注目されている。そうやって、奈良時代に編纂された『万葉集』以来1300年近く続いてきたのは、やっぱり短歌そのものが、素敵な表現手段だからだと思います。

岡本 「五七五七七」という定型があるからこそ、遊び甲斐があって。

 定型を「規制」と考えると窮屈に感じるかもしれないけれど、実際はまったく逆です。

岡本 定型に言葉をあてはめることで初めて、「自分はこんなことを思っていたんだ」「こういうことが言いたかったんだ」と明快になることがあります。

 「何文字でもいいですよ」と言われたほうが、かえって困惑しますよね。

岡本 私は歌を作ること自体が好きで、何か訴えたいことがあるから作っているわけではありません。ご飯を食べることと同様、日常の中のひとつの行為といった感じです。短歌を詠むようになり、「これも歌にできるかな」とモチーフを探すようになりました。

 短歌と親しむことで、日常を丁寧に見るようになる。何かを訴えるために作るのではない、という点も共感します。