安心感と深みをもたらす老賢者たち

作品としても、老賢者が登場するものは深みが増します。象徴的なのが、映画「スターウォーズ」シリーズにおけるヨーダでしょう。

エピソード6の時点でその年齢、なんとおよそ900歳。剣術も「フォース」の使い手としても超一流。何かにつけて絶対に間違わないという安心感があります。

あるいは文学界の最高傑作とも評されるガルシア= マルケスの長編小説『百年の孤独』(新潮社)には、メルキアデスという人物(途中からは亡霊)が登場します。古代ギリシャの数学者アルキメデスをもじった名前の老ジプシーで、物語の舞台となる架空の村マコンドにさまざまな文明の利器をもたらします。

そればかりではなく、村のピンチを救ったり、主人公たちにアドバイスしたり。そして最終的に、実はこの物語全体のキーパーソンだったことに気づかされます。現実と虚構が入り混じった独特な世界観の中で、この老賢者の存在感が光ります。

※本稿は、『人生最後に後悔しないための読書論』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。


人生最後に後悔しないための読書論』(著:齋藤孝/中公新書ラクレ)

年を重ねた今だからこそ、わかる本がある。何歳からだって読書を始めれば、新たな「ステージ」へ。博覧強記の齋藤教授が、文学や哲学からマンガまで古今東西の作品をもとに、人生100年時代を充実させるヒントを伝授。文豪・谷崎潤一郎の「変態」な記録、戦う美しい高齢者を描く『老人と海』、江戸時代の「健康本」、世界「三大幸福論」の魅力などなど。挫折した本に再挑戦するコツなどをまとめた「ライフハック読書術」も充実。老後の生活を支えるのは「知性」だ。齋藤式メソッドを身につければ、若年層を導く安西先生のような「老賢者」にあなたもなれる!