そこで大事なのは、段階を追って話し合うこと。おそらく息子である夫の頭はすっかりお母様のケアに傾いていると思います。そうした場合、自分自身のことがおろそかになっていることが多い。
そこで「お義母さんも大事だけれど、あなたは大丈夫?」と、まず介護者の支援に回って、メンタルの部分をケアしてあげるのはどうでしょう。そうして次の段階で、徐々にお金の話に移るのです。
●伝え方を工夫して
介護がどのくらい続くのかは、はっきりわかりません。その不特定期間を、限りのある経済資源の中でいかに快適に過ごせるようにするか戦略を練ることが介護の要点です。そのためには場当たり的に入れ込むのではなく、俯瞰的な視点を持たなければなりません。
とはいえ、妻に「俯瞰的視点を持って」と直球で言われたら、これまたカチンときてしまうかも。そこで伝え方を工夫するのです。
例えば「介護は長期間続くから、一緒に勉強に行ってみない?」と、自治体や保険会社などが開くセミナーに足を運んでみる。あるいは「あまりお金がかからない、良いサービスがあったわよ」と、情報を探して教えてあげるなど。
そうして後方支援に徹していると、だんだんあなたの意見に素直に耳を傾けるようになるのではないかと思います。
構成:
古川美穂
出典=『婦人公論』2019年5月28日号
阿久津美栄子
NPO法人UPTREE代表理事
1967年長野県生まれ。子育てと同時に遠距離介護をした経験からNPO法人を設立。2016年、介護の内容を記録する「介護者手帳」を製作し、介護家族の支援モデルの確立に注力している。著書に『後悔しないための介護ハンドブック』など
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