芥川龍之介の短篇にリスペクトを込めて

最新作の「オフィーリア」は、コロナ禍で時間ができて、日本の近現代文学を読み返した際に生まれました。なかでも芥川龍之介は小学生の時から愛読してきましたが、小説家になって読むと改めて、「よくもまあこんな小説が書けるものだ」と驚く作品ばかり。

とりわけ強く印象に残った芥川のある短篇にリスペクトを込めて、一枚の絵画が生まれるまでの残酷な復讐劇として「オフィーリア」を書きました。

芥川の足元にも及ばないことは自覚していますが、読み比べていただく面白さもあるのではと思います。どの作品を下敷きにしているかは、読んでみてのお楽しみということで。

作中では明言していませんが、シェイクスピアの戯曲『ハムレット』の一場面を幻想的に描いたジョン・エヴァレット・ミレーの絵画をイメージしていただくのも良いと思います。

最近はスマートフォンなどで画像検索すればすぐに絵が見られるので、小説も絵と一緒に楽しんでもらいやすくなりました。

自分の小説が呼び水となって、アートや作者について読者が興味を持ってくれることは、私がデビュー当初から抱いていた夢の一つです。

『黒い絵』(原田マハ:著/講談社)