『雁』は、その大映作品以前に豊田四郎監督により同じく大映が製作していて、お妾のお玉が高峰秀子、高利貸しの末造が東野英治郎、学生の岡田は芥川比呂志で、こちらは私も観ているが、この時は岡田自身が蛇を追い払ったような気がする。最初のヒット作は?
――『雁』の3、4年後に、関根恵子さん、のちの高橋惠子さんとコンビの純愛ものですね。『高校生心中 純愛』とか、この何本かでブレイクしたわけですが、その時は大映が斜陽になってきた時期だったんです。
しかし大映時代、市川雷蔵さんや勝新太郎さんと、ちらりとでもご一緒できたのはよかったです。お二人は時代劇が多いので撮影は主に京都なんですが、雷蔵さん主演の『陸軍中野学校』の時は東京だったのでご一緒できました。僕は兵士の一人として後ろのほうにいましたけど、目の前で演じる雷蔵さんは、やはり風格がありましたね。
勝さんとは『兵隊やくざ』でご一緒しました。撮影が朝の9時開始でも、お昼頃に勝さん、ベロベロに酔って車から引き出されてくるんです。休み時間には褌一丁で将棋を指したり、若い者と相撲を取ったりして、そんな姿にものすごいエネルギーを感じましたね。
勝さんには後にどこかの撮影所ですれ違った時、「お前頑張ってるな、最近」と声を掛けていただいて、覚えててくださったのが嬉しかったです。