左)五社英雄/1929年東京生まれ。ニッポン放送を経て59年にフジテレビ入社、80年に独立。代表作に『三匹の侍』『御用金』『人斬り』『鬼龍院花子の生涯』『吉原炎上』『極道の妻たち』ほか。92年死去(写真提供:五社さん)
右)深作欣二/1930年茨城県生まれ。53年に東映入社。代表作に「仁義なき戦い」シリーズ、『柳生一族の陰謀』『蒲田行進曲』『里見八犬伝』『忠臣蔵外伝 四谷怪談』『バトル・ロワイアル』ほか。2003年死去(写真提供:深作さん)

深作 とある舞台で主役を演じた女優さんに感動して、親父に教えたんです。ある日、父の宿泊先を突然たずねたら、その女優さんと一緒にいた(笑)。翌日、親父が「紹介したい人がいる」と彼女を連れてきて、3人で鍋を囲みました。それで親父のことは許せた。隠されたり嘘つかれたりするほうがイヤなんで。

五社 健太さんはそういうスタンスでしたけど、お母さんの気持ちは……。

深作 母はつらかったと思います。最初は母も、親父の作品のレギュラーとして一緒に作っていたのが、だんだん年を取っていくし、後輩たちと不倫されちゃうんですから。だからか当時、母はパジャマで外に飲みに行っちゃうぐらい、年中飲んだくれてました。

五社 うちの父は「女優さんには絶対に手を出さない」を徹底していた人だったので、噂になったことはないですね。ただ1回だけ、60歳でがんになった時に初めて、「実はおまえより年下の女優と付き合ってた」と告白されました。

自分ががんになって落ち込んでいた時に彼女にどれだけ支えられたかわからない、と。何でそんなことを私に告白するんだろうと思いました。

深作 お母さんとの関係はどうだったのですか。

五社 私が大学3年生の時、母の失踪という形で父は24年間の結婚生活に終止符を打ちました。それまで献身的に父に尽くしていた母が、実はホストクラブで遊ぶなどして大借金を作ってしまい……。

おかげで家も手放さざるをえなくなりましたが、父は母のことを戦友だと思っていたからか、「こういうことになったのは俺にも半分責任がある」と私に詫びました。