冷えや腰痛、不眠、尿もれなど、50代を境に、なんらかの不調に悩まされることが多くなる女性の体。そんな症状を予防・改善するカギが、骨盤の骨にあるようです(イラスト=おおの麻里 取材・文=佐藤ゆかり 構成=渡部真理代)
自律神経の乱れによる血流の悪化
これといった原因は思い当たらないのに、体調がすぐれない。そんな声に、多くの患者の不調を改善してきた鍼灸師の中野朋儀先生は、こう言います。
「不定愁訴の主な原因は、自律神経の乱れです」
自律神経は交感神経と副交感神経からなり、活動中や緊張状態の時に活発に働くのが交感神経です。対して、副交感神経は睡眠時やリラックスしている時に優位に働き、両者がバランスをとることで健康を維持しています。ところが、現代人はストレス過多になりやすく、リラックスできる時間が短い傾向にあるため、交感神経ばかり働いてしまう状態なのだそうです。
「交感神経は脳の興奮や血管の収縮などを招き、この状態が長く続くと、不眠やイライラだけでなく、血流が滞ることにより冷えや腰痛などの不調が起こります」(中野先生。以下同)
逆に言うと、不調の改善には副交感神経を活性させ、交感神経に傾きがちな自律神経の乱れを正すことが大事だということです。副交感神経が優位になると血管が拡張して血流がよくなり、脳の興奮や緊張が抑制され、胃腸の働きも活発に。その結果、さまざまな不調が解消されるのです。では、どうやって副交感神経を活性させればいいのでしょうか。
「そのカギは“仙骨”を温めることにあります」
仙骨を温める生活で不調になりにくい体質に
仙骨とは、骨盤の中央にある逆三角形の形をした骨のことで、尾骨の上の、手で触ると硬い部分。「ここが、体の中で最も効果的に副交感神経を刺激できる場所」だと、中野先生は言います。
自律神経の束は、脳から仙骨にある穴を通って下肢までつながっています。体の表面に近いところを通るのは、首の後ろと仙骨だけで、首は筋肉や脂肪におおわれているため、温めても神経まで熱が伝わりにくいとのこと。