写真提供◎AC
貧困家庭に生まれ、いじめや不登校を経験しながらも奨学金で高校、大学に進学、上京して書くという仕事についたヒオカさん。現在も「無いものにされる痛みに想像力を」をモットーにライターとして活動をしている。第56回は「二度と会わない『派遣さん』に優しくしてくれた人」です。

人の本性がよく見える

「派遣さん」「マネキンさん」「アルバイトさん」。

転職活動をしながら非正規雇用を転々としていた時、名前で呼ばれることよりも、そうやって雇用形態をさん付けで呼ばれることが多かった。短ければ1日でいなくなる人の名前なんて、いちいち覚えていられないのだろう(と言いつつ、年単位でいても名前で呼んでもらえないこともざらにあるが)。立場が低い非正規、さらに期間が短い現場であればあるほど、人の本性がよく見える。

人は自分に利益がある人になら取り繕うが、そうでない人はぞんざいに扱うものだ。有期雇用の非正規に愛想よく、親切に接してもしなくても、正社員には何のメリットもないのだから。

『死にそうだけど生きてます』(著:ヒオカ/CCCメディアハウス)

朝一番に挨拶をしにいくと、「こっちは派遣なんていらないんだよ。上が手配しちゃって困ってる」とため息をつかれたこともある。

必要なことをほとんど教えられずに現場で働くよう言われ、分からないことを聞くとブチギレられたり、顎を振って「あれだよあれ」と指示されたり、酷い時は機嫌が悪い社員からみぞおちに肘鉄をくらったこともあった。