その人がくれた優しさが、10年近く経った今も、私の心に残り続けている

レジ担当の店員はみなピリピリしていて、何度かキレられたこともあって、責任者にももっときつく怒られるものだと思っていた私は、拍子抜けし、安堵した。

そして、「サインを書くので待っていて」と言った責任者が、業務用のジャケットを脱いで、(従業員が私的な買い物をするときは、ジャケットを脱ぐ決まりがある)バックヤードから売り場に入っていった。

そして戻ってくると、手にはクリスマスケーキがぶら下がっている。そして、私のほうにやってくると、「これ。今日はありがとうございました」とケーキを差し出した。

写真提供◎AC

私のミスのせいで、忙しい時間にお客さんの家まで謝罪に行かないといけなくなったのに、何一つ私を責めず、むしろねぎらってくれ、しかも、わざわざケーキを買ってくれたこと。本当に驚いて、その心がありがたく、それまでのささくれだった心が、一瞬で温かくなった。

優しくしたって、私は明日にはもういない。そしてたぶん二度と関わることもない。何を施そうと、相手に一切のメリットはない。それなのにその人がくれた優しさが、10年近く経った今も、私の心に残り続けている。

前回「夜道で「ぶつかりおじさん」に遭遇、心身共にダメージを受けた。周りの人のやさしさが身に染みた」はこちら

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