掛け軸の拝見の仕方

海外の方に喜ばれる教養
茶道はお茶を点てたり、頂くだけのことと思われるかもしれませんが、茶道とは、掛け軸と茶花の彩りを「観る」ことから始まり、お香の香りを「嗅ぎ」、和菓子を「味わい」、お茶を点てる音を「聴き」、茶道具に「触れ」、五感全てを用いて楽しむことができる、とても奥深いものです。
自分をさらに高める教養
掛け軸に馴染みがないと部位の名前を覚えるのも大変ですが、ここで簡単に説明します。禅語が書かれている部分を「本紙」、そして本紙の上下部分を「一文字」と言います。一般的に横長で細長く、金襴の裂地(きれじ)(=織物)が使われる事が多いです。一文字のさらに上下に付いている部分を「中廻し」、その左右を「柱」と呼び、一文字に次いで質の良い生地が使われています。掛軸の上側から垂れている一文字と同じ裂地の二本の細長い飾りは「風帯(ふうたい)」と言い、中廻しのさらに上部を「天」、下部は「地」と呼びます。

*掛け軸の拝見の仕方

(1)床の間の前に座り、自分の前に扇子を置き、掛け軸の筆者である禅僧に対して一礼する
(2)墨蹟(禅僧の筆跡)を拝見する
(3)どなたが書かれたものかを表す署名と落款(らっかん)(印のこと)にも注目する
(4)一文字から風帯、中廻し、天地の順番に拝見する
(5)拝見し終えたら、掛け軸の前で一礼して立ち上がる

<『「お茶」を学ぶ人だけが知っている「凛とした人」になる和の教養手帖』より>

掛け軸を拝見することで、亭主がどのような考えでその茶席を設けたのか、どのようにお客様に過ごしてほしいかという「亭主からお客様へのメッセージ」を受け取ることができます。

 

※本稿は、『「お茶」を学ぶ人だけが知っている「凛とした人」になる和の教養手帖』(実務教育出版)の一部を再編集したものです。


「お茶」を学ぶ人だけが知っている「凛とした人」になる和の教養手帖』(著:竹田理絵/実務教育出版)

30年間現役のグローバル茶道家が、500年の歴史を持つ和の教養を8つのジャンルに分け、読みやすくコンパクトにまとめました。

現在和文化への回帰が高まっている30-50代の女性に、また、急速に回復しつつあるインバウンドの方々、海外での外国人の方々とのコミュニケーションにも必携の一冊です。