今尾さん「日本の地形図の記号である卍に対して『ナチス・ドイツを連想させる』という意見が多数あった」(写真提供:Photo AC)
地図を読む上で欠かせない、「地図記号」。2019年には「自然災害伝承碑」の記号が追加されるなど、社会の変化に応じて増減しているようです。半世紀をかけて古今東西の地図や時刻表、旅行ガイドブックなどを集めてきた「地図バカ」こと地図研究家の今尾恵介さんいわく、「地図というものは端的に表現するなら『この世を記号化したもの』だ」とのこと。今尾さんは、「日本の地形図の記号である卍に対して『ナチス・ドイツを連想させる』という意見が多数あった」と言っていて―― 。

知名度抜群、寺と神社の記号

小学生が知っている地図記号の筆頭を挙げるなら、寺か神社の記号ではないだろうか。

これは私の勝手な想像だが、彼らが通っている「小中学校」の記号よりおそらく知名度は高い。

寺院の卍形、神社の鳥居形はいずれもシンプルな図形で、寺の賽銭(さいせん)箱や屋根瓦などにあしらわれた卍形、神社に入る際に必ずくぐる鳥居の形がイメージしやすいことも知名度の高さを支えているのだろう。

まずは寺の卍であるが、漢和辞典では「十」の部首に含まれているものの、本来は純粋な漢字ではない。

発祥の地はヨーロッパかアジアか判然としないようだが、それだけ古くから各地で用いられてきた意匠である。

サンスクリット語ではスワスティカと呼ばれ、「右まんじ」と「左まんじ」があるが、いずれにせよ古くから幸福、吉祥の印として扱われてきた。

寺院の地図記号は「左まんじ」である。