神社の記号

寺や神社に限らず、対象が多い「建物記号」は、目印として役立つものを優先記載することになっているから(小中学校のように全対象を掲載する記号もある)、たとえば市街地にたくさんある寺のいくつかは適宜省略されても、山上の一軒家であれば好目標なので無住の小さな堂であっても記載されることがある。

著名なものについては記号ではなく注記(文字)で表示されるが、戦前の陸地測量部の部内資料『地形図図式詳解』には「第二節 家屋」の項に「仏宇ハ固有名詞或ハ仏名ニ依リ某寺、某院、某堂ト書シ、或ハ仏名ニ固有名詞ヲ冠シ某観音、某薬師、稀ニ薬師、地蔵、大師等ト書ス」としている。

「稀ニ」というのは、市街地などの錯雑したスペースにおさめるため固有名詞を省き、単に「薬師」「大師」などとするしかない場合だ。

いずれにせよ固有名詞は正式な寺名とは限らず、通りの良い名称が表示される。これは利用者からすれば当然で、たとえば愛知県豊川市の有名な豊川稲荷を正式名称の「妙厳寺(みょうごんじ)」と記されても一般には通じにくい。

神社の記号も寺と同じく「迅速測図」以来の記号である(「仮製地形図」のみ笠木が一重でπのような形だった)。こちらも仏宇などと同様、「迅速測図」の「神社」から「仮製地形図」の「神祠(しんし)」に変わって長らく続き、「昭和17年図式」からは「神社」に戻って現在に至る。

前出の『地形図図式詳解』には「神祠ハ固有名詞或ハ祭神ノ名ニ依リテ某神社、某社、某祠等ト書シ、或ハ神名ニ固有名詞ヲ冠シ某太神、某八幡等、稀ニ八幡、天神、稲荷等ト書ス」としている。