太陽ならこんなことはない。

日の出の時刻を見計らって東の空を眺めれば、暗い夜空がしだいに白んで、じわじわと朝焼けが広がって、そしてドーンと、まさに天下のスターが舞台に登場したかのごとく、まん丸太陽が顔を出す。太陽を見落とすことはまずない。寝坊しないかぎり。

日中とて、雨雲に覆われた日は確認しにくいが、だいたいどこらへんにいるかの予測はつく。そして夕日も同様。

季節によって少し位置は変わるものの、西の方角を見渡せば、黄色く輝いていた太陽がだんだんオレンジ色に変わり始め、その色を周囲に発散させつつ高度をゆっくり下げ、空一面が赤く染まる頃、巨大化した太陽はギラギラと、静かに沈んで、おやすみなさい、また明日。

日没の瞬間を見落とすことはあっても、その場所がわからないなんてことはない。これほどに太陽の動きは馴染み深い日々の自然現象であるにもかかわらず、月の動きは捉えにくい。

恥ずかしながら私は、月というものは太陽が沈んだら、交代して東の空から上がるものだと長らく信じてきた。ならば昼の月はなんなんだ? と問われても考えないことにしていた。が、急に気になってきた。

というのも、新たな住処に移って以来、月の姿を見かけない日が増えたからである。周囲を高いビルに囲まれたマンションの上階だ。絶好の眺望環境とはいえないが、バルコニーから月を拝むことぐらいはできるはず。