MARUU=イラスト
阿川佐和子さんが『婦人公論』で好評連載中のエッセイ「見上げれば三日月」。月好きの阿川さん。スーパームーンの最大サイズをスマホに収めようとした際に、とある事件が起きたそうで――。
※本記事は『婦人公論』2023年12月号に掲載されたものです

いつの頃からか、満月にさまざまな名称がつくようになった。スーパームーン。ブルームーン。ピンクムーン。それとは別に、昔ながらの「中秋の名月」という和名もある。最近は名前のついた満月のことがさかんにニュースで報じられる。

「今日はスーパームーンです。一年でいちばん大きな満月をどうかお見逃しなく」

月好きの私としては気が気ではなくなる。夕刻あたりから空を見上げるたびに月を探す。ところがなぜかすぐには見つからない。ビルに囲まれた都会に住んでいるせいかもしれない。見えないなあ。悲観していると、

「あ、お月様!」

忽然と空に現れる。今までどこにいたのよ。