なぜ緑内障は見落とされるのか

緑内障の障害は、電気信号を伝える伝達系の細胞の障害です。

伝達系の細胞とは、網膜神経節細胞とその枝のこと。枝の集まったものが視神経です。この視神経を直接見ると、細胞レベルでの障害がかなりの精度でわかります。

今ではこの細胞の障害を機械で測定できるので、深作眼科では最新の測定機械を2台設置しています。私の場合は、機械は補足的に使っていますが、高額ではあるものの、これがあれば早期の緑内障の診断は難しくありません。

早い段階で緑内障が見つかれば、点眼薬がよく効きます。緑内障の進行を抑えられる可能性のある眼圧を「目標眼圧」として治療の目安としています。初期の段階での目標眼圧は15mmHg程度。この眼圧なら点眼薬でも達成できます。

しかし、緑内障は発見が遅れがちな病気です。末期になるまで患者さん自身がまったく気づかないことも多いのです。見え方の異変に気づかなければ眼科を受診しないためでしょう。

両眼で見ていると、視野が狭くなっていることに気づきづらい。さらに、緑内障の診断は技術と経験を要すため、多くの眼科で正しい診断ができていないこともあります。

白内障があるかどうかはすぐにわかりますが、緑内障は見落とされ、「何年も近所の眼科に、軽い白内障だと言われてきただけだった」という患者さんが少なくありません。

そのようなケースでは、白内障も決して軽くはありません。だからこそ深作眼科に手術を求めてきます。白内障手術は問題なく施行できますが、気づかないままに併発して進行悪化してしまった緑内障がもっとも大きな問題なのです。

こうした場合、緑内障進行を止めるための「目標眼圧」は、初期の例よりずっと低眼圧を維持していかないと進行を止められません。

具体的には中期から末期の進行した緑内障の「目標眼圧」はさらに低い9~10mmHgほどでないと治療にならない。点眼薬などの薬だけでは下げることは不可能です。

中期以降は手術でしか進行を止められませんし、末期の例では、いくら眼圧を下げても進行を抑えられないことが多いので、手術は中期のうちに行うべきです。

※本稿は、『100年視力』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。


100年視力』(著:深作秀春/サンマーク出版)

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