久しぶりに会った両親の老いを感じて……(写真提供:Photo AC)

厚生労働省によると、日本人の平均寿命は男性81.41歳、女性87.45歳(2019年)。一方、日常生活を健やかにおくれる「健康寿命」は、男性72.68歳、女性75.38歳と、そこには10年近くの差異があります。寿命を迎えるまで、なるべく自分の力で元気でいたいーー。そんな健康長寿を実践しているのが、92歳で現役の看護師の川嶋みどりさんです。看護歴75年、多くの認知症の患者と接する中で気づいた共通点を紹介します。

田舎の老親を引き取った途端、認知症が進んだ例

環境の変化がきっかけとなり、認知症を発症したり、症状が重くなったりすることがあります。たとえば、田舎にいるお母さんを都会にひきとった途端に認知症がひどくなるのも、その一例です。環境の変化で大きなストレスを受けるのです。

高齢者はとくにそういう傾向がありますから、環境を変える場合は上手に変えないと、心身への大きなダメージとなりかねません。
見慣れた顔、見慣れた景色。吸い慣れた空気。すべてが総合的に刺激となっています。慣れたものほど心地よく、リラックスできます。それが人間の生命力や治る力の源になっているのです。

あたり前の生活習慣を大切にする、と私がくり返し言うのは、そうした理由があってのことです。
何かを変える場合は、急に変えるのではなく、徐々にやることが大事です。
たとえば、入院する場合も、高齢の方なら、顔見知りの先生や看護師がいる病院のほうがいいと思います。

訪問看護師さんたちからよく聞くのは、「病院ではすごい認知症で大変だったのに、在宅に迎えたらよくなった」といった話です。

一種の防御反応というか、逃避なのかもしれませんね。心配がなければ認知症にならない、というのもよく言われることです。お金の心配をしたり、親しい人と別れたり、そういうことが刺激になって、認知症を発症する人も多くいます。