『沿線格差』という言葉を目にすることも増えましたが、フリーライターの小林拓矢さんいわく、「それぞれの沿線に住む人のライフスタイルの違いは、私鉄各社の経営戦略とも深くかかわっている」のだとか。今回はその小林さんに「西武鉄道沿線の魅力と実情」を紹介していただきました。西武鉄道について語る際には、堤康次郎氏のことを欠かすわけにはいかないそうで――。
西武鉄道沿線の魅力と実情は?
西武鉄道について語る際には、堤康次郎(つつみやすじろう)のことを欠かすわけにはいかない。
堤康次郎は、もともと鉄道会社の経営をする人というよりも、宅地開発のデベロッパーのようなところがあった。
鉄道技術者でもなく、官僚でもない、しかも早稲田大学在学中から企業経営を行なっていた、叩き上げの経営者である。のちには国会議員にもなり、衆議院議長の要職も務めた。
そもそもが、不動産開発に熱心だった人である。軽井沢の別荘地や、箱根の温泉地、国立(くにたち)の学園都市など、沿線以外のところでもビジネスを営みながら、鉄道事業も行なっていたというのが正確だろう。
堤康次郎のもと、西武鉄道は東急電鉄のようになろうと、さまざまな事業に取り組んでいた。
ホテル事業や百貨店、スーパーなどを手がけ、東急グループと似たようなビジネスモデルを展開しようとしていた。