45年、そばにいた人がいなくなって
2話目を書き終えたころの2022年12月、夫が他界しました。その3年くらい前から体力的に弱りつつあるのは感じていたのですが、ある日血中の酸素濃度が下がり、呼吸不全を起こして。入院したら肺の手術が難しいところにがんが見つかりました。79歳という年齢もあり、治療は一切せず自宅に帰ることにしました。
いまの介護保険制度では、一人暮らしの人であれば訪問介護による身体介護のほか、掃除や洗濯、食事の準備や調理といった生活援助サービスを受けられますが、健康な成人の同居家族が一人でもいると生活援助面でのサポートは望めません。
病人に三度の食事をさせ、介護をしながら大河ドラマの脚本を書くのはやはり難しく、執筆はストップしてしまいました。
ケアマネジャーさんも自治体にかけあうなど、いろいろ苦心してくれて。でも結局、何もかも私が担わなければならない老老介護の典型となりました。介護と仕事の両立には、まだ多くの問題が立ちはだかっているのを痛感しましたね。
最後は容体が急変して病院で息を引き取りましたが、やるだけやったと思い、涙も出ませんでした。夫が恐れず、苦しまずに人生を終えられるように――それをプロデュースすることが妻としての最後のミッションだと思って、こちらの命も削れるほどやりましたので。