1人でも多くの観客に居場所を見つけてほしい
アンさんと美晴との出会いを通して、新たな人生を踏み出した貴瑚。しかし、その後に大きな喪失を経験し、誰にも告げず失踪してしまう。引越した先で、貴瑚は愛(いとし)という少年に出会う。愛は、母親から日常的に虐待を受けていた。愛に出会ったことで、貴瑚の生活は一変する。
痛みを抱えた貴瑚は、アンさんとの出会いによって人生が変わりました。でもその過程で、人を傷つけてしまうこともあって。そこで学んだことを「成長」と呼ぶことはできないけれど、間違いなく今までとは違った領域に達しているはずなんです。
そんな状態の貴瑚が「愛」という存在に向き合った時、貴瑚にしかできない関わり方をしていく。その姿を見て、寂しさや孤独の只中にいる方が1歩踏みとどまって、明日も朝がくることに希望を抱けるような気持ちになってもらえたとしたら、本作が作られたことに意味が生まれる気がします。
“痛み”は人それぞれにあるものだから、どう関わっていくかは実際すごく難しい問題だと思います。比べられるものではないし、簡単に「わかる」と言えるようなものでもない。それでも関わろうとする気持ちというのはきっと相手に届くはずですし、貴瑚にとって愛がかけがえのない存在であるように、愛にとっても貴瑚がそのような存在に変化していくことが、貴瑚の心のよりどころになっているのではないでしょうか。
世の中には、自分たちが想像し得ないようなものを抱えている方がきっとたくさんいると思うんです。貴瑚や愛やアンさんのように、52ヘルツの声を持った人も、その声に寄り添いたいと思う人も、まだその声が聞こえない人も、みんなに聞こえるヘルツで誰かを傷つけてしまったことがある人もきっといて。
そんなたったひとりの生活者たちに、温もりや気づき、希望のようなものが感じられる作品であったら嬉しいですし、1人でも多くの観客が、映画館に居場所を見つけられる作品であってほしいと願っています。
『52ヘルツのクジラたち』は3月1日より全国順次公開
本予告:https://youtu.be/Z2ibBQcZGI
『52ヘルツのクジラたち』
3月1日(金) TOHOシネマズ 日比谷他全国ロードショー
出演:杉咲花 志尊淳 宮沢氷魚 小野花梨 桑名桃李/余貴美子 倍賞美津子
監督:成島出/原作:町田そのこ「52ヘルツのクジラたち」(中央公論新社)
主題歌:「この長い旅の中で」Saucy Dog(A-Sketch)
2024年|日本|カラー|ビスタ|5.1chデジタル|136分|配給:ギャガ
(C)2024「52ヘルツのクジラたち」製作委員会
公式ホームページ:https://gaga.ne.jp/52hz-movie/
ストーリー
ある傷を抱え、東京から海辺の街の一軒家に移り住んできた貴瑚。
虐待され「ムシ」と呼ばれる少年との出会いが呼び覚ましたのは、貴瑚の声なきSOSを聴き救い出してくれた、
今はもう会えないアンさんとの日々だったー