一見すると悠々自適に暮らしているシングル女性たち。しかし、過去には離婚や、借金を抱えるなど、さまざまな苦難がありました。彼女たちはどのように、その難局を乗り越えてきたのでしょうか。麻子さん(仮名)は夫の会社が倒産して、借金を抱えてしまいーー(取材・文=武香織)
息子と離れて暮らす寂しさ
麻子さん(43歳)は、19歳で結婚し、独身時代からスポーツ・インストラクターの仕事を正規で続けていたが、長男の妊娠・出産を機にパートへ転身。収入は減っても、平穏な生活だった。だが、28歳のとき、夫がベンチャー企業のサラリーマンを辞めて商品開発の事業を展開、3年ももたずに倒産させてしまうと「地獄へ転げ落ちた」。
借金の額は、麻子さんが連帯保証人になっていた分だけで2000万円を超す。麻子さんは小学1年生の息子を実母に預け、化粧品の訪問販売、銀行系の会社でカード決済端末を売り込む営業、夜はクラブのホステス、早朝にはパン屋でバイトにいそしみ、月額約80万円を稼いだ。一方の夫は、一発逆転を狙って単身海外へ渡り、新事業を始める。
「海外にいる夫が『俺のほうが時間にゆとりがあるし、息子をこっちで育てるよ』って。夫の魅力は、良くも悪くも仕事にエネルギッシュなところと、子煩悩なところ。私は、息子と離れて暮らす寂しさを噛み殺し、夫のもとへ息子を送り出しました」
しかし、麻子さんは「息子ロス」に陥る。焦燥感ばかりが押し寄せ、仕事をしていても心ここにあらず。収入は目減りし、返済が滞ることも……。息子を委ねて約半年後、夫から耳を疑う電話が入った。「事業がうまくいかない。やはり俺のもとで息子を育てるのは無理だ」。
「ハッと目が覚めました。仕事への情熱と子煩悩さを取り除いたら、この人には何も残らない。だったら、離婚して私と息子、2人で人生を歩むほうが100倍マシ。息子さえいてくれれば、私は頑張れる! って」