「私、大変なの。いい仕事ない?」
離婚後、息子を引き取った麻子さんは、相変わらず月額80万円を稼いだものの返済額が多すぎて、電気や水道を止められることもたびたび。クラブの日給をもらうと、帰宅途中のコンビニで支払いを済ませた。
会う人会う人に、つとめて明るく、「私、大変なの。いい仕事ない?」と触れ回っていたら、大手IT企業勤めの人から、「うちのシステムの営業をやってみない? 1件の契約につき70万円になる」と誘われた。断る理由はない。持ち前の気さくさと、やるからには徹底的に勉強する根気強さで、月に1件以上の契約を取り付けた。
「せっかくITを勉強したので、ウェブ広告作成の業務も始めて、法人化したんです。自宅でできる仕事だし、私と同じく大変な思いをしているシングルマザーを雇って。そこから波及して、彼女たちを支援する団体も設立。シングルマザーがエステティシャンとして働く美容サロンもつくりました」
経営は順調にいき、元夫の借金は完済。今では毎月、自分のために自由に使えるほどお金に余裕がある。
成人した息子にある日、「うち、けっこう借金で困っていたのよ」と打ち明けると、「うそ! ぜんぜん気付かなかった!」との返答。
「どんなに辛くても、笑顔を貫き息子に苦労を隠せたことが、何よりの成功だと感じました。今日より明日、ちょっとずつ良い時間を積み重ねていけたら、将来が暗いはずはない。老後? 怖くなんてありません(笑)」
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すでに子どもが自立し、シングルである私は、やはり「将来を懸念するより、今を楽しむ」派だ。老後資金などないけれど、現在をハッピーな気分で過ごせているのだから、それでいいのでは? と悠長に思っている。
麻子さんの言うように、「今日より明日」の積み重ねで、毎日を豊かな気持ちで過ごすことが大切だ。