陰陽道は賀茂・安倍(土御門)両家が世襲する学問に

平安時代の初め頃、陰陽道の内容はトップシークレットで、外部に絶対に漏らしてはいけない、という扱いを受けていました。中国大陸や朝鮮半島からやってきた最先端の知識を有する人が任じられることも多かったようです。

陰陽師はまさに専門集団だった。なんかかっこいいですね。

ところが秘密は漏れるもので、やがて貴族層が陰陽道の知識を分有するようになり、天文や暦に詳しくなっていきます。それが『応天の門』に登場する菅原道真の活躍する時代にあたるでしょうか。

それから道真より少し後に賀茂忠行・保憲父子、そして彼らに学んだ有名な安倍晴明が現れます。

「光る君へ」では安倍晴明をユースケ・サンタマリアさんが演じ、花山天皇の寵愛する藤原忯子とその身ごもった子を呪詛するなど、こちらも秋山さんに負けず劣らず、存在感を発揮していますよね。

結果として、陰陽道は賀茂・安倍(土御門)両家が世襲する学問になるのです。

※本稿は、『応天の門』(新潮社)に掲載されたコラムの一部を再編集したものです。


「失敗」の日本史』(著:本郷和人/中公新書ラクレ)

出版業界で続く「日本史」ブーム。書籍も数多く刊行され、今や書店の一角を占めるまでに。そのブームのきっかけの一つが、東京大学史料編纂所・本郷和人先生が手掛けた著書の数々なのは間違いない。今回その本郷先生が「日本史×失敗」をテーマにした新刊を刊行! 元寇の原因は完全に鎌倉幕府側にあった? 生涯のライバル謙信、信玄共に跡取り問題でしくじったのはなぜ? 光秀重用は信長の失敗だったと言える? あの時、氏康が秀吉に頭を下げられていたならば? 日本史を彩る英雄たちの「失敗」を検証しつつ、そこからの学び、もしくは「もし成功していたら」という“if"を展開。失敗の中にこそ、豊かな"学び"はある!