「立ち止まらずにほんの少しずつでもいいから進んでみる。ゆっくりしたペースでも行動し続けると、〈きっと自分は大丈夫だ〉と思えるのです」

落ち込んだ時はゆっくり行動してみる

そもそも休業したのは、息子としっかりと向き合うため。仕事と育児のバランスがうまく取れず、かなり苦悩したすえの決断でした。休業中は、PTAの役員を担当し、謝恩会の司会をするなど、それはそれで忙しく過ごしてはいました(笑)。

でもそのおかげで、学校に頻繁に行って、家では見られない息子の一面を知ることができ、いい期間になったと思います。

そんな息子も今や立派な青年となり、私と同じ道を歩み始めました。「モデルとして活動したい」と言われた時は、正直複雑な心境になってしまって。浮き沈みの激しい業界ですし、自分自身が「商品」として見られる世界です。できればほかの仕事に就いてほしいというのが、母親としての本音でした。

けれど彼の、「ファッションやモデルという仕事への憧れだけで志したわけではなく、自己を確立するのが目的だ」という話を聞いて、考えを改めたんです。私がモデルになったのも、同じ志だったことを思い出して、息子に対しても、業界の荒波にもまれて、人として成長してほしいと願っています。

私もこの世界でさまざまな苦難を経験したからこそ、成長することができました。直接誰かに言われたわけではないのですが、ファッション業界に「冨永愛」が飽きられてしまったのではと感じたこともあります。プライベートでいろいろあって、精神的にキツい時もあった。

そういう時私は、大きな目標や目的意識を見失わないことを心がけています。立ち止まらずにほんの少しずつでもいいから進んでみる。ゆっくりしたペースでも行動し続けると、「きっと自分は大丈夫だ」と思えるのです。そうやって自分を守ることが、低迷期を耐え忍ぶ私の処世術です。