母への恩返しは…

──それはすごい借りですね。お母さんに恩返しはできたんですか。

おふくろが80歳まで現役で看護師をやっていて、介護施設に入ったのは90歳近かったかな。亡くなるまでの9年間くらいは施設に入った。その前もずっと仕送りしていたんです。当然、おふくろにもらったお金よりもはるかに多い分、毎月送ってたんだよ。

でも死んだ後見たら、そのお金に手をつけてないんだよね。親ってそういうもんなんですよね……。

姉に「あなたがおふくろの面倒を見てくれたから、これ何かの足しに使って」って言って、そのときに相続も放棄したんですよ。姉がずっと一緒に暮らして面倒を見てくれていたんで。

──お姉さんがいるんですね。

6つ上の姉と二人きょうだいです。本当は俺の1歳下にもう一人いたらしいんだけれども、生まれて1週間くらいで亡くなったので。親父に言わせると、その子は優秀な子だったらしい。あの子は利発な顔していた、って言うんだよ。あの子が生きていたら、こんなことにはならなかったって。

 『本音』(著:小倉智昭、古市憲寿/新潮社)