30年前の常識から自分を解放して
料理も台所仕事も、もっとラクしていい――。私がそうお話ししても、「やっぱり料理は手作りじゃなきゃ」「おかずは3品はないと」とおっしゃる女性が多いのも事実です。それはきっと、なんでも生真面目に頑張ってしまう日本人らしさなのかもしれませんね。でも、頑張りすぎてヘトヘトになったり、キッチンに立つのがつらくなって、食事をおろそかにしてほしくない、というのが私の願いです。
料理が苦手という方もいるでしょう。でも、苦痛に感じる方は、まず自分が何に縛られているのかをよく考えて、その苦痛の原因を、付箋1枚に1項目ずつ書き出してみるのはいかがでしょう。
「料理の手際が悪くなった」「お弁当のおかずを、すべて手作りするのがつらい」「凝った料理を作らないと、手抜きに見える」「献立を、毎食変えなければならない」……。自分や家族の体に必要な栄養を摂るために、その「ねばならぬ」は本当に必要なことなのか、付箋を1枚1枚見ながら考えてみてください。縛られなくてもよいことがあると思いますよ。
それに、皆さんがいま日常的に行っている調理法は、親から教わったもの。つまり、30年以上前の常識や方法なんですね。
大学の授業で、カレーを作ってもらったことがあります。学生たちはまず鍋に油をひいて肉を炒め、ほかの具材を煮込み、最後にカレーのルウを入れていました。でもカレーのルウが固形なのは、油脂で固めているから。ならば、油の摂りすぎにならないよう、肉を油で炒めなくてもいいわけです。「どうして油をひいたの?」と聞くと、一様に「母がそうしていたから」と言っていました。こうした思いこみの調理法は、案外多いと思います。
30年前にはなかった便利で安全な道具が、今はたくさん溢れています。さまざまな「縛り」から自分自身を解放し、もっと柔軟な思考を持ってみて。今の時代に生きるあなたにとって、ラクなルールを身につければ、「食べること」がもっと簡単で楽しくなると思います。