1年かけて言語の分析に取り組み続ける赤ちゃん
こうした事実を知ると、言語の音を聞く、ということに関して、生後12か月というのは、一つの大きな区切りになっていることがわかります。
つまり赤ちゃんは生まれたのち、そこから逃げ出すこともできないまま、まわりの人が出す切れ目のない音の流れを聞き、その分析に取り組み続けます。
そして、実際に「その言語ならではの音の聞き方」が身につくまで、まる1年かかる、ということです。
そして生後12か月頃と言えば、まさに周囲の大人たちが「赤ちゃんが初めてしゃべった!」と喜ぶ時期でもあります。この一致は、決して偶然ではないのです。
※本稿は、『赤ちゃんはことばをどう学ぶのか』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。
『赤ちゃんはことばをどう学ぶのか』 (著:針生悦子/中公新書ラクレ)
東京大学で認知科学や発達心理学の研究に従事する著者は、赤ちゃんの「驚き反応」に着目するなどして、人がことばを学ぶプロセスについて明らかにしてきました。子どもはラクラクとことばを覚える「天才」? 赤ちゃんは耳にした「音」をどうやって「ことば」として認識する? 生まれた時から外国語に触れていたら、誰でもバイリンガルになれる? 本書を読めば、赤ちゃんの無垢な笑顔に隠れた努力に驚かされること間違いなし!