幸齢者

和田 おっしゃるとおり。それに加えて私は、年をとってむしろ毎日が楽しく充実していると感じられ、幸せを感じて生きておられる人を「幸齢者」と名づけました。これは年をとっても社会的地位が高いとかお金があるとかではなく、本人がどう感じるか次第のものです。

高齢期というのは、今までのいろんなしがらみや常識みたいなものから解き放たれて、自由に生きられるときだ、と。

『うまく老いる 楽しげに90歳の壁を乗り越えるコツ』(著:樋口恵子・和田秀樹/講談社)

日本の高齢者は、「年をとったら、いい人間でなくちゃいけない」と思いすぎていますよ。若い人の邪魔にならないようにと小さくなっているように見えます。生きているのに、人生から引退してしまっているみたいにも見えます。

こんなことをしたら年甲斐(としがい)もないなどと思わずに、何でも挑戦したらいい。年をとってからの挑戦でいいのは、最高齢記録を更新できることです。高齢者が人生を楽しみ、笑顔でいることは、若い世代にとっても「こんなふうに生きられるんだ」という希望にもなります。

戦中、戦後と苦しい時代を生き延びて、我慢することも多かった高齢者ですから、人生の最終コーナーはもっと好きなように、人生を楽しんでほしいと思います。