高齢になったら「人の手を借りる力」を磨く
樋口 長谷川先生とは、病院と地域をつなぐ中間施設(介護老人保健施設の前身)をつくる委員会でご一緒でした。ほんとうにいろんなことを教えていただいて、すばらしい方でした。
私はもし認知症になったら、長谷川先生のように公表しようと考えています。「まわりに隠さないで、友人や隣近所に告げて、できるだけ公的援助を受けてほしい」と娘にも言ってあります。
公表するかしないかは個人の自由ですが、家族が認知症であることを隠しての「かくれ介護」が増えると、外に向けて助けてと言えない家族が悲惨な末路を遂げたりと世の中暗くなるばかり。
社会学者の上野千鶴子さんからも、私のように「老い」をテーマに仕事をしてきた者には、自身の老い方を公表する責任があると言われ、なるほどと納得しました。
和田 私もそれはいいことだと思います。認知症であることを公表することで、協力者が増え、暮らしやすくなります。
80代以降は「老いを受け入れる時期」で、補聴器や 、車いすといった道具を上手に利用することが大切ですが、道具を上手に利用することと同時に、うまく「人の力を借りること」も必要になってくると思います。
日本人は「人に迷惑をかけてはいけない」という思い込みが強く、それはある意味で立派なことですが、年をとったときにはマイナスに働きます。うまく人の力を借りる能力は、老いを生きるうえで、ぜひ身につけてほしい能力です。