依存力

樋口 人にお願いする力ですね。私は「依存力」と言っていますが、すごく大切なことだと思います。本当は助けてほしいんだけれど、自分からその状況を説明せず、何となく雰囲気で察してほしいという人がいます。

勘のいい人が近くにいたら手を貸してくれるでしょうけれど、ほとんどの場合は手を貸してくれません。当たり前ですね、助けてほしいと伝えていないのですから。その結果、勝手に「誰も助けてくれない」と落ち込んだりします。

依存力というのは、ただ人に甘えるというのではなく、きちんと自分の状況を人に伝えて、なおかつ自分と他者との関係のなかで失礼にならないように、どうしてほしいか的確に伝える能力も含まれるんじゃないかしら。その結果、相手が手を貸してくれたら、「ありがとう」とお礼を言うし、ダメな場合でも理由を聞いて、あとくされなく引きます。

お金で解決できることなら、それもひとつの解決方法です。誰か助けてくれるのを期待して待っているのではなく、自分からオープンにかかわっていくという姿勢が大切なのだと思っています。

と、そんなことを言いながら、一方で介護される身になることに、強い抵抗があるのも私です。一時デイサービスを利用していたとき、理学療法士から「ヒグチさん、介護されるのは嫌ですか」と聞かれました。

「嫌かもしれません。介護されるほうは『好きで介護される身になったんじゃない』と、いつも悲しい思いをしていると思いますから」と答えました。

われながら、かわいげのない答えでした。でも、いつかは介護される身になることはたしか。これから、ケアされる身になったとき、しっかりと「ありがとう、お世話かけました」と言えるように、依存力を高め「ケアされ上手」にならなければと思っています。

※本稿は、『うまく老いる 楽しげに90歳の壁を乗り越えるコツ』(講談社)の一部を再編集したものです。


うまく老いる 楽しげに90歳の壁を乗り越えるコツ』(著:樋口恵子・和田秀樹/講談社)

老いを怖い、つらいとすごすより、高齢期を自分らしく自由に生きるチャンス到来と頭を切り替えたいものです。

60代、70代、80代と、樋口先生の赤裸々で痛快な老いの実況中継に、6000人以上の高齢者を診てきた和田先生が、心と体の両面から「幸せになる」秘訣を解説。