すぎやまこういちからのハガキ
彼らがそのクレバーなまわり道をしていたころ、他にも奇跡的な出会いが続きました。
コンテストでも活躍した森田和郎さんがエニックスから発売した将棋ゲーム『森田和郎の将棋』の商品アンケートハガキで「すぎやまこういち*3」という差出人名の一通が届いたのです。
すぎやまこういちさんは、この時点ですでにザ・ピーナッツ、ザ・タイガースといった有名ミュージシャンを何組も世に送り出し、「亜麻色の髪の乙女」などヒット曲を多数かかえた有名作曲家でした。
まさかそんな大御所がPCゲームのアンケートハガキを? とエニックス社員たちも困惑したようですが、結果的にこのハガキはまぎれもなく当人が送ったものであり、すぎやまさんは大のゲーム好きだったということが判明したのです。
今では大御所有名人でゲーム好きな方は加山雄三さん、鈴木史朗*4さんをはじめ何人もいらっしゃいますが、当時の感覚としては非常に珍しいことでした。
千田プロデューサーはこの縁を活かしたいと考え、すぎやまこういちさんにドラクエの音楽を依頼することになります。
まだ出来立てホヤホヤの新興メディアであり、世間からは低く見られがちだったテレビゲームの音楽をすぎやまこういちさんが担当したことは、その後、テレビゲームの文化的地位を向上させていくひとつの要因にもなりました。