「視力」に関する医者と患者の齟齬
目が悪くなると「視力が落ちてきた」といいますね。眼科に行ったときも、先生に「視力が落ちてきたんです」と訴える人が多いと思います。
でもそのことが医者に伝わらないで、モヤっとしたことはありませんか? 実は医者がいっている視力と、患者さんがいっている視力には齟齬があるのです。
1つは患者さんがいっている視力は、ほとんどが裸眼視力のことであるということです。それに対し、医者がいっている視力は矯正視力。すなわちメガネをかけて見える視力のことをいっています。
裸眼視力は、日によって異なります。朝はよく見えていたのに、夕方になったら朝より見えなくなったという人もいます。1日のうちでも視力は変化するのです。
体調によっても異なります。例えば、おなかが痛いときに視力を測れば、いつもより見えないと思います。
今日はよく見える、昨日はよく見えなかったなど、裸眼視力では差が出やすいのですが、矯正視力に関してはそれほど差が出ません。そのため眼科医たちは矯正視力を治療の指標にしているのです。
裸眼視力がいくら低下していたとしても、メガネをかけて矯正すればよい。というのが眼科医のスタンスです。
そのため、「先生、視力が落ちたんですよ」と患者さんがいくら訴えても、医者は「いや、視力は落ちていませんよ」という会話が普通に成立します。
もう1つは、患者さんは見えないことの全体を視力といっています。でも医者がいう視力は違います。
例えば、視野が狭くなっている人は、視力1.0あったとしても、歩けなくなる人もいます。すると患者さんは、「視力が落ちて歩けなくなりました」と訴えます。
医者にしてみれば、視野狭窄(きょうさく)は何とかしなければなりませんが、視力には問題ないということになるわけです。