平松先生「医者がいっている視力と、患者さんがいっている視力には齟齬が」(写真提供:Photo AC)
環境省が公開している「花粉症環境保健マニュアル2022」によると、約3人に1人がスギ花粉症と推定されるそう。そんな花粉症の症状の一つに目の痒みがありますが、「目を掻いてしまうと網膜剥離になりやすい」と話すのは、眼科専門医・医学博士の平松類先生。今回は平松先生に「目のトリセツ」について解説していただきました。先生いわく、「医者がいっている視力と、患者さんがいっている視力には齟齬がある」のだそうで――。

「視力」に関する医者と患者の齟齬

目が悪くなると「視力が落ちてきた」といいますね。眼科に行ったときも、先生に「視力が落ちてきたんです」と訴える人が多いと思います。

でもそのことが医者に伝わらないで、モヤっとしたことはありませんか? 実は医者がいっている視力と、患者さんがいっている視力には齟齬があるのです。

1つは患者さんがいっている視力は、ほとんどが裸眼視力のことであるということです。それに対し、医者がいっている視力は矯正視力。すなわちメガネをかけて見える視力のことをいっています。

裸眼視力は、日によって異なります。朝はよく見えていたのに、夕方になったら朝より見えなくなったという人もいます。1日のうちでも視力は変化するのです。

体調によっても異なります。例えば、おなかが痛いときに視力を測れば、いつもより見えないと思います。

今日はよく見える、昨日はよく見えなかったなど、裸眼視力では差が出やすいのですが、矯正視力に関してはそれほど差が出ません。そのため眼科医たちは矯正視力を治療の指標にしているのです。

裸眼視力がいくら低下していたとしても、メガネをかけて矯正すればよい。というのが眼科医のスタンスです。

そのため、「先生、視力が落ちたんですよ」と患者さんがいくら訴えても、医者は「いや、視力は落ちていませんよ」という会話が普通に成立します。

もう1つは、患者さんは見えないことの全体を視力といっています。でも医者がいう視力は違います。

例えば、視野が狭くなっている人は、視力1.0あったとしても、歩けなくなる人もいます。すると患者さんは、「視力が落ちて歩けなくなりました」と訴えます。

医者にしてみれば、視野狭窄(きょうさく)は何とかしなければなりませんが、視力には問題ないということになるわけです。